Case Studiesケーススタディ
マチノマ大森
地域密着型の商業施設の新ブランド一号店として、基本構想段階から、マーケティング・開発コンセプト立案・環境計画(建築/共用部内装/サイン等)、ブランド開発、MD計画、販促計画などトータルプロデュースを担当致しました。
これからの時代に必要とされるNSC構築というミッション
※NSC = Neighborhood Shopping Center(近隣型ショッピングセンター)の略称
共働きの増加、リモートワーク、自由な働き方の拡がり、高齢化、etc. . . 働き方やライフスタイルが大きく変わり、住宅地での活動の内容が従来のものとは変化してきています。そのためスーパーマーケットにいくつかの業態をプラスするだけでは、人々が常に集う場所になりづらくなる懸念が生まれていました。
ECの発達、核家族化を考えると今後の商業施設開発のあり方を考える上で、単なる売り買いの場ではなく、「地域の生活にどれだけ関われるか?」という視点でショッピングセンターのあり方を見直す事が重要なミッションとなりました。
生活圏における商業施設のあり方
トラフィックの多い駅前立地ではなく、駅からは離れ前面道路も2車線しかないエリアでの施設計画。ただ、周辺は商圏人口が豊富であることを踏まえ、地域にお住まいの方々の暮らし方を深耕し、デイリーに様々な動機で頻繁に来場されるような、狭小な商圏でも成立する新たな都市型NSCを目指しました。
計画・実施にあたっては、以下のような目標を設定し、プロジェクトをスタートしました。
●モノの提供から多様な価値の提供へ(シフト)
●豊かな日常風景を生み出す環境づくり
●これからの大人世代も楽しみ集える仕組み(づくり)
●立地に適した地域団体との連携
マーケティングから建築計画、MD(テナント)および導入機能の計画、ブランディングまで、施設開発を全面的にサポートさせていただきました。
街の日常生活の場として、滞在性・コミュニティの場となる「過ごせる・活動できる」商業施設をご提案
従来は『場の機能=活動内容』が単純に一致していましたが、働き方・活動の場が変わることで『場の機能=活動内容』があいまいに定義されるようになっています。例〉カフェで働く、家で買い物、お店でワークショップ、etc . . .
商業施設のあり方として長期視点での施設づくりを見据えたときに、「住まい」や「職場」、「店」の間を繋ぎ、それぞれの使い方が重なり合うような場が、これから先の暮らしの中心になると考えました。
■ データと実地調査によるマーケットとターゲット設定
国勢調査などの定量的なデータ、交通期間・周辺施設の調査に加え、実際の現場周辺の人々の活動の様子、ペルソナを調査し、どのような生活感を持たれている方が実際にいるかを把握したうえで、この街の未来を予測しながらコンセプトワークをスタートしました。
※写真はイメージです。
■ コンセプトイメージ 街に必要とされている「中間領域」
場と機能の関係をあらためて見直し、街に必要とされている「中間領域」を創り出すことで人々がより活動しやすい街になるというイメージを持ちながら、コンセプトワークを進めました。
■ コンセプトの構築 地域の人々の活動や集う場 = 「街の間(マチノマ)」
昔の家の「茶の間」は集い・語らい・遊び、学ぶといった家族みなの活動が行われる、家族のシェアスペースとも言えるものでした。
ライフスタイルの変化により街のなかににじみ出した『食べる・買い物する・学ぶ・遊ぶ・働く・会話を楽しむ・モノを作る・考え事をする・運動をする…etc』
といった多様な活動を受け止め、個人でも、家族や仲間と一緒でも心地良く過ごせる場所となる「街の間(マチノマ)」づくりをめざしました。
■街に開かれ、多様な活動の場を内包する 建築・環境デザイン
建築・環境デザインにおいても街に開かれ、多様な活動の場をもつプランづくりを検討。
地域の人々の日常生活の場となることを前提に、無機質な質感にならないよう素材感のある落ち着いた空間をデザインしました。
ショッピングセンターづくりで前提となるローコストを前提としながら、サイン・備品などの選定も含めて「いかに良い空気感をつくれるか」にチャレンジしています。弊社で商業視点での基本的な建築・共用部のプランニングデザインを担当し、設計施工の担当ゼネコンの実施設計を監修しました。
人の流れ方・テナントの区画のあり方など、収益施設としての視点を重視しながら、商業の場として機能的な環境づくりを行いました。
↑ 街との接続部分に、広場、大階段、大きな開口のエントランスを設けるとともに、2Fの飲食ゾーンの存在も認識しやすくなるため、大きな開口+テラスを設置。ナチュラルなカラーリングで過ごしやすい空間を演出しています。
↑ エントランスから入った導入部に大きな吹き抜けを設け、上層階の存在、人の流れを認識しやすい空間構成に。また、吹き抜け部には小規模な広場を設け、イベントスペースとしての機能ももたせました。
各店舗ファサードも開放的にするルール設定を設けることで、見通しの良い買い回りしやすい売場づくりを施しました。
■家・地域での活動を豊かにする MD計画
1F フードカルチャーマーケット
スーパーマーケットを中心に、食文化を楽しむ・学ぶ場として食業態を中心に配置。大型の魚専門店なども導入し(開業時)、店舗のスタッフから新しい食べ方を知るような、日常的な食にまつわるコミュニケーションが生まれる場を目指しました。
2F ライフDIYマーケット
日常の生活を自分好みに創り出すサポートをする業態を構成。
またフードホールには地域の憩いの場として、昼飲み〜家族の食事まで多様な過ごし方が行われる業態を構成しました。
3F ローカルコミュニティハブ
様々な活動を通じたコミュニティが生まれる機能を導入。フィットネスなどの大人の活動のみならず、保育園など地域生活のインフラともなる場づくりを目指しました。開業時は各種ワークショップを日々開催する「マチノマノマ」を設置し、店舗・地域団体と来場者が繋がる活動の場も。
■ブランディングデザイン
「マチノマ」というコンセプトの表現と、オリジナリティあるシンボルマークの構築を目指し、ロゴデザインの検討を進めました。
複数案の検証を経て、M、12本のライン(12ヶ月=1年中)、街の土台となる土(ブラウン)、育つ姿(グリーン)、明るい未来(ブルー)といった、コンセプチュアルな要素を中心に組み立てたシンボルマークを採用することになりました。また、屋外の大型サインなどへの展開も踏まえ、細かなカラーリング・ディテールの調整を施し、最終形を構築しました。
■完成後 3年を経て コンセプトの実現
奇しくも開業1年後に、感染症の拡がりにより家・家近辺での活動が重要視される社会状況になりました。マチノマのコンセプトを考えているときに、より家の近くでの活動が盛んになると予測してはいたのですが、これほど急速に変化するとは予想外でした。しかし、この施設にとっては狙い通りとでもいうように、コロナ禍でも営業状況は好調のようです。
リモートワークなどが進み、家中心の生活が浸透する中、当初のMDコンセプト、「FOOD CULTURE(食文化を楽しむ )」、「LIFE DIY(自分好みの生活を創る)」、「LOCAL COMMUNITY(地域のコミュニティとつながる)」は、現代にまさに求められるキーワードとなり、今後も重要視されているライフスタイルなのだと思います。
家・オフィス・学校・お店などの役割が模索される中、「Machinoma(街の間)」は形を変えながら、今後も求められる場のあり方なのだと私たちは確信しています。